10月20日、TOHO シネマズ 新宿にてティーチイン付き舞台挨拶を実施!遠い目をしていつも川岸に座っている《死者》である少年役を演じた齋藤潤、そして酒井麻衣監督が登壇した。
公開から2週間余り。作品の反響を尋ねられた齋藤は、父から「すごく考えさせられる映画だった」、母からは「すごく心が温かくなった」と感想をもらったことを紹介した。「目の前にいる皆様の声をすごく聞きたい」と、観客との対話にも期待を寄せた。

ティーチインで、出演を通して発見や成長を感じたことを問われると、齋藤は西畑との共演を振り返った。撮影は数日間で、西畑との撮影初日は「手が震えていました」と緊張したことを明かす。それでも、芝居が始まると、吸い込まれるような感覚や、自身の純粋な思いを受け止めてもらえる感覚に感動したそうで、「西畑さんの優しい心にぐっとつかまれて、幸せを一つゲットしました」と笑顔を見せた。映画『ストロベリームーン 余命半年の恋』に続いて齋藤とタッグを組んだ酒井監督も、その変化を実感したという。「『ストロベリームーン』のときは少年だと思っていたんですが、今回はどっしりとした青年として来てくださった」と述懐。撮影では「齋藤さんがお話しするだけで空気が変わる。そんな齋藤潤さんを見られて幸せでした」と、その存在感を称えた。
齋藤は、作中でも人物像が明かされる描写が少ない「少年」を演じるための役作りについて、「個人的に落ち着きがないタイプなので、じっとしていられるように、お風呂場でシャワーを出し続けながら10分ぐらいぼーっとする時間を作ったりしました」と明かした。その話を受けた酒井監督からは、「齋藤さんが演じてくれるってならなければ、登場しなかった役なんですよ」と意外な事実が飛び出し、齋藤は「えっ!? 初めて聞きました」とびっくり。酒井監督によると、原作には登場するものの、映画の脚本づくりの当初は描いていなかった役柄だという。限られた登場場面で重要な役割を担うだけに、説得力のある配役が必要だったとし、「齋藤潤さんだったらお願いしたい」と出演を依頼した経緯を明かした。齋藤は「そんな役割をありがとうございます。光栄です」と感謝を伝えた。
映像美についての質問が寄せられると、酒井監督は「特に今回こだわったのは時間の止め方」と回答。雨が止まっているように見える表現を挙げ、「雨って重力があるので、普通に止めたら線に見えるはずなんですけれども、映画として見たい世界、誘ってくれる世界観として、ガラス玉みたいな、そういうきれいな粒をどのように現実に合わせられるか、いろいろと試行錯誤しました」と、映画ならではの映像を追求した過程を伝えた。
また、本作で2度目のタッグとなった2人には、互いの魅力を尋ねる質問も寄せられた。酒井監督は「齋藤潤さんは唯一無二の存在でして、息を吸っているだけ、佇んでいるだけで映画の空気をまとっている方だと思っています」と絶賛。さらに「齋藤さんに会った方はみんなファンになっていく。愛されるべき人ですし、みんなを幸せな気持ちにして魅了していく俳優さん」と言葉を重ねた。齋藤が出演する別の映画の予告編を目にするだけでもうれしくなるといい、「齋藤さんが居てくださる、俳優として表現してくださることで、私自身が幸せになる。本当にすてきな俳優さんだと思っています。これからもぜひ出演よろしくお願いします」と呼び掛けた。齋藤は「ありがとうございます! 本当なら土下座したいくらいなんですが……うれしい」と大感激。自身が感じる酒井監督の作品の魅力については「きれい」と表し、光や色合い、そこに佇む登場人物の美しさに惹かれ、「自分もその世界に入りたい」と憧れていたことを打ち明けた。「人間がきれいに、純度が高く存在できる気がして」と独自の感覚を言葉にし、「いつまでも見ていたいなっていう世界をいつも生み出してくれるので、すごく余韻に浸りたいし、浸れる。それが心地いいなって感じています」と、酒井監督の創り出す作品への思いを口にした。
作品が自身の死生観に与えた影響にも話が及んだ。酒井監督は、友人や仕事仲間など、当たり前にあいさつを交わしている相手とも「いつどのように会えなくなるか、本当にわからないんだなって、この物語を通じて実感した」と、身近な人との関わりを見つめ直したことに触れた。齋藤は、本作を通して「人が生きていること自体が尊いんだな」と感じたといい、「今を生きるために、尊いって思えるのって難しいっていうか、それだけで満たせるものでもないですし、何かにすがりたい思いもなくならないですし」と、自身の感覚を言葉にした。続けて「でも、この作品に出会わせていただいてから、こうして皆さんとの対話だったり共有している時間が、生きている上ですてきなことだし、生きる意味を与えてくれるんじゃないかなって考えるようになりました」としみじみ話した。
「生まれ変わるなら何になりたい?」との問いには、2人の意外な願望も。酒井監督は「この人生で出会えた人たちと出会う前提で、俳優さんになってみたいかもしれない」と回答した。「物語の中に入る」ことが好きで映画監督を志した思いに触れ、スクリーンの中で作品の世界に入れる俳優への憧れをのぞかせると、齋藤は「見てみたいです!」と応じた。一方、神社や寺院巡りが好きで、最近もプライベートで地方の神社仏閣を訪れた齋藤は「仏像さんになってみたい」と回答。「皆さんが手を合わせてくれるじゃないですか。お願い事、普段の感謝とか、心の声を聞ける」と理由を挙げ、「神になりたい(笑)」と続けた。酒井監督は「さすがですね。齋藤潤ワールド」と反応し、観客を笑わせた。
さらに、作品にちなみ、時給300円でしてみたいアルバイトを聞かれる場面も。酒井監督は「早朝にパン屋さんで働いて、朝日を眺めながら道行く人を眺めたい」と回答。齋藤は「電車のつり革を磨いてみたい」と答え、「普段使っている交通機関を支えているんだぞって、自信につながるかなと思って」と理由を添えた。
イベントの最後には、2人から観客へメッセージが送られた。齋藤は「この作品は、自分の心の誰にも言えない寂しさだったり、孤独なもの、認められない過去の自分みたいなものを、少し癒やしてくれる作品なんじゃないかなと思います。皆さんの心のお守りになってくださったらうれしいです」と呼び掛けた。普段から聴いているほど好きな主題歌「心海」にも触れ、「心のお守りとして、今日、持って帰ってくださったらうれしいです」と願いを込めた。これを受け、酒井監督は「お守りという言葉、すごくいい言葉ですね」と応じ、「この作品は本当に前向きになれる映画なので、お守りとして皆さんの心の中にずっとありますように」と想いを重ねた。そして「まだまだ公開は続くので、いろいろな方に『よかったよ』と言っていただけると大変ありがたいです」と述べ、舞台あいさつを締めくくった。